ANIPLEX.EXEより発売されたビジュアルノベル作品『ヒラヒラヒヒル』をクリアしました。
いや、実は1か月位前には既にクリア済みだったんですが、自分の中で感想として咀嚼するまでの時間が必要で、結局2024年を迎えてからの公開になってしまいました。
正直、私の文章で本作の魅力・凄さを伝えられるとは微塵も思っていませんが、一人でもプレイするきっかけになってくれればいいなぁ……という想いを込めて書き記します。
企画・シナリオ担当の瀬戸口廉也さんは勿論、本作に携わった全てのスタッフ。そして、本作を商業作品としてリリースする事にGOを出したANIPLEX.EXEに感謝。本当に素晴らしい作品でした。
ヒラヒラヒヒル|ネタバレ無し感想・クリアレビュー
発売日 | 2023年11月25日 |
ジャンル | ビジュアルノベル |
開発 | BA-KU |
販売 | ANIPLEX.EXE |
対応機種 | PC(Steam・DMM GAMES・DLsite) |
プレイ環境 | steam |
クリアタイム | 18時間前後(全エンディング回収) |
『風乱症』という不治の病と向き合う人間模様を描いた物語
死人が蘇る謎の病『風乱症』が存在する大正初期が舞台の物語
これだけ聞くと「和ゾンビもの?」って印象を受ける人も少なくないとは思いますが、『風乱症』はれっきとした病気であり、蘇った人も代謝異常や記憶障害、幻覚・錯乱の症状こそあれど、よくあるリビングデッドもの様に、血肉を欲し他者を襲う様なものではありません。
しかし、死んでから蘇るという異常性・頭髪や体色の白化・幻覚症状などの影響で、偏見や差別が後を絶たず、多くの患者が『ヒヒル』と呼ばれ迫害されている。本作はそんな世界観。
そんな病と向き合う医師や患者。そして、その家族の葛藤を描く物語
――――そこには『奇跡』なんてものはなく、ただ只管に足掻き生きるのみ……。
かつて『SWANSONG』をプレイした時にも感じましたが、瀬戸口廉也さんの作品ってただ只管にリアルで、救い無き中で足掻き、そして小さな幸せを見つけよう!って感じの作風ですよね。
本作にもそれは健在で、ただ只管にリアルで、重く、突き立ててくるような鋭さがありました。
あえてジャンルを一言で言い表すとすれば、『看護』とか『介護』になるんじゃない?
――――って思える位、本当に真摯な作品です。
『風乱症』という架空の病を用いてはいますが、これは現代の看護・介護問題に当てはまるものも多く、単なるフィクションと切り捨てられるものではありませんでした。
ついつい後回しにしてしまってはいますが、両親の介護は勿論、いつかは私達自身もその立場になる時がくる訳で、とてもじゃないが他人事と笑ってすませられるものじゃないんですよね。
筆者自身、創作物に対してあまり感情移入するタイプの人間ではないんですが、本作に関しては完全に感情移入させられてしまいました。
物語として優れているのは勿論、プレイヤーの意識や価値観に直接問いかける力を持った怪作。これほどまでのメッセージ性を持つ作品に出合ったのは、本当に久々かもしれません。
正直、よく発売できたなーって思いました
内容的に攻めてるってのも勿論あるんですが、それ以上に、現在のノベルゲーのニーズに全くあって無さそうなものを、よく一般商業ラインで企画として成立させたなぁ……というのが率直な感想。
確かに、プレイすれば納得せざるを得ないパワーに満ち満ちた作品ではあるんですが、宣伝も大してうってないし、内容的にSNSで爆発するようなキャッチーさも無いし、正直大ヒットは見込めないタイトル(販売戦略・規模的に)だと思うんです。
でも、それでも世にリリースされ、steam上では242人中98%が好評という快挙達成。DLsiteでは全63件の評価で星5点満点中4.78、DMMでも平均評価 4.67点という高評価を得ています。
これは、それだけ携わったクリエイター達やパブリッシャーが本作の力を信じていた結果と言っていいのではないでしょうか?あえて言い方を変えるのであれば、それだけ瀬戸口廉也さんの企画とシナリオに惚れ込んだ人が多かった証明だと私は思っています。
――――なので、最後に改めてもう一度お礼を言いたい!
瀬戸口廉也さんをはじめ、携わった全てのスタッフ&ANIPLEX.EXEの皆様、本当に素晴らしい作品をありがとうございました。
豪華声優陣による素晴らしき熱演にも注目
天間武雄 CV:水中雅章
加鳥周平 CV:山本兼平
常見明子 CV:上田麗奈
野村惣一 CV:星祐樹
常見敬次郎 CV:小柳基
野村朝 CV:熊谷海麗
衣川兵太郎 CV:室元気
辻菊栄 CV:安西英美
島田辰子 CV:河野茉莉
声優さんの知識はそこまで豊富では無いですが、メイン級のキャラクターは皆素晴らしい演技でした。特に常見明子役の上田麗奈さんは素晴らしかったです。本作で一気にファンになりました。
総評
万人受けするタイトルでは無いけど、少なくとも私には強くぶっ刺さりました。瀬戸口廉也さん&BA-KU&ANIPLEX.EXEの作品に今後も注目していきたいと思います。
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