スクウェア・エニックスから発売された期待の実写ADV『春ゆきてレトロチカ』をクリアしました。
『428』,『TRICK×LOGIC』の伊東幸一郎氏の最新作かつ、久々の実写系ADV作品という事で、発売前からかなり期待していましたが、嬉しい事に私の期待を余裕で越えてくれる傑作でした。
ストーリーの好み自体は人それぞれあると思いますが、『街』,『428』とはまた違った良さに溢れた作品で、間違いなく自分のADVゲーム史に刻まれる1本です。ADV好きならプレイしておくべきタイトルだと思うので、ネタバレ無しで全力で推していきます。
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春ゆきてレトロチカ:感想・レビュー
発売日 |
2022年5月12日(木) |
ジャンル |
ミステリーアドベンチャー |
対応機種 |
Switch/PlayStation®4/PlayStation®5/STEAM® |
公式サイト |
https://www.jp.square-enix.com/retrotica/ |
春ゆきてレトロチカ:良かった点
実力派揃い。安心して観れるミステリードラマ
実写を使ったADV、しかも全編動画で展開されるという事で、演じられる役者さん達の実力が表現に直結する作品になっています。公式サイトの『登場人物』紹介を見ていただければ分かる通り、抜擢されている役者さんたちは実力派揃いなので安心してドラマに没入する事が出来ます。一部、俳優業以外を本職とされている方もいらっしゃいますが、そのキャスティングにもきちんと意味があるってのが本作の凄い所で、詳しくは言えませんが、気付いた時には「あっ!」っと驚く事でしょう。
あと、『台詞』も秀逸で、これも詳しくは言えませんが、全編通して「してやられたなー」ってシーンが多数用意されています。良い物語に良い演技が乗ってるのは本当に気持ちが良いものです。
平凡だけど魅力的に描かれたキャラクター達
実写ADVって、普通にやっちゃうと必然的にキャラクターが弱くなりがちだと個人的に思っていて、実際、『街』とか『428』って、キャラクターにインパクトを持たす為に突飛な属性を付与している傾向にあると思うんですよね。※雨宮桂馬=オタク刑事、遠藤 亜智=エコ吉等。
でも、今回の『春ゆきてレトロチカ』に登場するキャラクターに関しては、そういう小細工が一切存在しなかったんですよね。しかし、それでいてしっかりと個性的で、しっかりと魅力的に描かれていたので、「これは何が理由なのかな?」って考えてみた所、やはり、全編フルボイス・フル動画ってのが大きかったのかなぁー?という結論に至りました。
実写の動画となると、テキスト・ビジュアル・声以外部分(俳優さんの演技・呼吸・間等)等の細かい情報が必然的にキャラクターに乗っかる為、普通のテキストアドベンチャーよりも格段にキャラクターの情報力は多くなるはずです。まぁ勿論、作品ごとに向き不向きはありますが、『春ゆきてレトロチカ』という作品においては、実写を使う必然性を多分に感じる事が出来ました。
時代を越えて同じ俳優さんが別のキャラクターを演じ分けるという仕様についても、キャラごとに細かく演じ分けしてくれているので、違和感なく受け入れる事ができると思います。
林ゆうき氏による美しいBGMの数々
林ゆうき氏の楽曲も本当に素晴らしくって、音楽の力をひしひしと感じました。
普段はドラマ・映画・アニメの楽曲メインで活躍されている方の様ですが、今後はゲーム界隈でも沢山活躍してほしいです。レトロチカをプレイして、一発でファンになりました!
なお、初回盤にはミニサントラのダウンロードコードが付属しているんですが、それじゃ全然足りないのですぐさまOSTを予約しました。(勿論ミニサントラもありがたいですが……)。
5月24日発売!届くのが楽しみです
謎解きはかなり優しめ。誰でもプレイできるという点では〇
謎解きの難易度は、最初から最後までかなり優しめ。物語の進行とともに少しずつ難易度自体は上がって行くのですが、用意されている「謎」(空白)に「手がかり」(ブロック)を穴埋めしていくという方式ゆえに、極論、考え無しの総当たりでも解ける仕様になっています。
この仕様を『ぬるい』と感じるか『親切』と感じるかは人それぞれですが、この手のゲームで謎解きが難し過ぎるのは、逆にプレイの妨げになりかねないので、個人的にはいい塩梅だったと思います。「それでもまだ難しい…」って人は、ガイド・ヒント機能があるので、そちらを使えば問題なく遊べるはずです。普段ゲームに全く触れない人にもオススメし易い。これは良い配慮ですね。
謎が紐解けていく終盤のカタルシス!終章は神!
ストーリーが本当に面白かった!
―――いや、もう、ネタバレできないのが本当に残念で仕方ないので、一人でも多くの人間に早くプレイしてもらって、早くレトロチカについて語り合いたいです。
特に、終盤の面白さはガチで、少しずつ謎が紐解けて行く感覚は、何物にも代えられないカタルシスがありました。それでいて、最後の最後までプレイヤーの予想を裏切る展開も用意されていて、良い意味で裏切り続けてくれたのは本当に良かったですね…(うずうず)。
しかも、導入から面白くなるまでのテンポも良く、序盤・中盤・終盤と一切中弛みしない工夫が施されているので、「途中で飽きちゃった!」みたいな事もほとんどないと思います。
ちなみに筆者は終章で泣きました。深夜に一人、ゲームしながら涙する成人男性…(いや、面白いものは面白いし、何歳になっても感動するものは感動するのだ!何にも恥ずかしくないぞ)。
春ゆきてレトロチカ:悪かった点
プレイ環境によっては操作性に難あり!?
筆者はSwitch版をプレイしたんですが、推理パートの操作性とコントローラー(パッド)との相性が最悪でした。※具体的に言うとZRで「手がかり」を掴むという操作がやり難かったです。ただ、これはSwitch版での話であり、マウス操作が可能なSteam版ではまた話が違うと思うので、操作性はプレイ環境によって前後する(だろう?)とさせてください。
バッドエンド集め等の寄り道・収集要素が存在しないのは少し残念
『街』や『428』のお楽しみ要素の一つであったバッドエンド収集等の要素が一切存在しないのは少し残念でした。ただまぁ、終始シリアスな作風なので、いきなりトンデモな展開になるのもおかしな話ではあるので、シリアスな雰囲気を重視する為に導入されなかったのかもしれません。
クリア後の要素に気付き辛い
エンドロール後にかなり重要な追加要素がアンロックされるんですが、これが非常に分かりにくい。私自身、見逃していた人間なので、これは非常に危ういと感じました。アンロックされた事が分かるような工夫があればもっと良かったです。
人によっては7480円税込みは高く感じるかも?
普段からテキストアドベンチャーを愛好している人なら問題ないと思いますが、「プレイ時間15時間前後のADVに7480円(税込み)は高い!」と感じる人も中にはいるかもしれません。でも、個人的な満足度は余裕で7480円を越えているので、ここは強気でオススメしたい所です。
ADV好きなら絶対にプレイして欲しい1本
筆者は、元々実写系ADVが好きな人間なので、基本的にこの手のゲームの評価は辛口になりがちなんですが、今回は素直に楽しめました。そして泣きました。
間違いなく、『街』,『428』等の名作と、今後、肩を並べるであろう傑作です。ADV好きならマストバイのタイトルなので、これを見たら即購入・即プレイしてください。
―――そして、プレイし終わった暁には、筆者と是非語りあってください(懇願)!
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