【ネタバレ注意】月姫リメイク評価・レビュー|21年の時を経て再誕した新たな月

空の境界・Fateシリーズ等でお馴染みTYPE-MOONが贈る伝奇ビジュアルノベル『月姫 -A piece of blue glass moon-』の感想・レビュー記事です。

今も尚、カルト的な人気を誇るビジュアルノベルの傑作が、21年の刻を経て蘇る!

リメイクの制作が発表されてから約12年、半ば都市伝説かの如く語り継がれていた『月姫リメイク』が、マジのマジで発売されちゃいました!

本作『月姫 -A piece of blue glass moon-』は、【月姫】の「月の表側」に当たる”アルクェイド”シナリオ『月姫』と”シエル”シナリオ『夜の虹』の二篇で構成された作品となっており、「月の裏側」に当たる”秋葉”琥珀”翡翠”シナリオは未収録という形でのリリースになっています。

まぁ、この仕様に不満が無いと言えば嘘になるんですが、その分、収録シナリオのボリュームとクオリティは無印版よりも遥かに強化されていて、十分満足できる仕上がりだったのは事実です。

新生したTYPE-MOONの原点。吸血鬼をめぐる少年の物語を目撃せよ!

【おねがい】
本記事は表と裏の二部構成になっています。記事前半は未プレイの方に配慮してネタバレの一切を排除したものになっていますが、後半は逆に一切配慮しておりません。未プレイの方には大変申し訳ないのですが、直ちにバックの赤文字が出てきたら警告通り直ちにバックする様にお願いします。

©TYPE-MOON

スポンサーリンク

月姫 -A piece of blue glass moon-感想・レビュー

発売日
2021.8.26日発売
ジャンル
伝奇ビジュアルノベル
対応機種
PlayStation®4/Nintendo Switch™
公式サイト
月姫 -A piece of blue glass moon-
クリアまでのプレイ時間:約45時間(筆者調べ)
筆者のプレイ環境:Nintendo Switch

月姫リメイクの良かった点

大胆かつ攻めた改変の数々

自称『月姫』博士のおっさん達を突き放す新キャラ・新設定・新展開の嵐!「え?誰?」とか「知らねー」とか「マジ?」みたいなのが次々に押し寄せてきて、本当にあっという間の45時間でした。

中には、自分たちが愛した『月姫』が変わってしまう事に抵抗を覚える人もいるかもしれませんが、押さえるべき所はしっかり押さえた上での改変なので、問題なく受け入れられると思います。

まぁそもそも、時代設定が2010年になっている時点で、覚悟すべき事ではありますよね(これは公式サイトにも書かれている設定なのでネタバレではないと判断)。

実際にプレイするまでは、「20年以上前の作品のリメイクでネタバレ禁止をお願いするってどういう事?」って疑問しかなかったですが、今となっては「そりゃそうだわ……」としかなりません。

プレイした上で、やっぱり「改変なんて嫌じゃ嫌じゃ!」ってなる人は、素直に古いPCと『月箱』を引っ張りだしてきましょう(提案)!

キャラクターの魅力は更に強化されていたように感じる

ビジュアルやデザインが一新されたってのは勿論なんですが、それ以上に、台詞・心描写・掛け合い等、テキスト・演出面による魅力の引き上げが凄まじい作品でした。無印版で既に魅力度100だったキャラクター達が、リメイクによってちゃんと200になっている。これはただ足しただけでは無し得ない事なので、作り手の努力が強く感じられるポイントだと思います。

『月姫』(無印版)が発売されたのって2000年の12月29日とかですからね。21年の隔たりを綺麗に埋めて、2021年に通用するキャラクターに昇華するのは中々に大変な作業だったと思います。

あと、プレイするまでは「アルクェイドはロングスカートこそ至高!」とか内心思っていましたが、実際にプレイしたらミニスカートのアルクェイドも良いものでした。眼福!

立ち絵と表情のバリエーション多さ・背景の美しさは必見

このゲーム、立ち絵と表情のバリエーションが滅茶苦茶多いんですが、その上でカメラのアングル等で滅茶苦茶遊びまくっているので、単なる会話シーンでも全く退屈しない作りになっています。

キャラ同士の距離が近付くシーンでは、立ち絵もその距離に応じて近付き、離れるシーンでは実際に離れる。拡大・縮小などを使った表現によって、掛け合いの臨場感が圧倒的に強化されています。

まぁ、地味といえば地味なポイントではあるんですが、これを当たり前の様に最初から最後までこなしているのは相当大変なはず……。

そして、キャラクター達が立ち回る舞台である『背景』は超美麗!それでいてキャラクターが浮かない融和感。ビジュアル面への細かいこだわりを随所に感じる事ができました。

2021年に『教えて!シエル先生』を楽しめるという事実

2021年に『教えて!シエル先生』を再び楽しめるという事実……(昔は知得留先生でしたが)。

あ、知らない人もいると思うので補足しておきますが、「教えて!シエル先生」ってのは、バットを含むエンディング後に発生する小ネタコーナー(なんちゃってお役立ちパート)です。

基本的にはグダグダなノリのコメディコーナーなんですが、時々核心に迫るような事を言ったり、ここでしか聞けないような裏話をぶっこんで来るので、意外と油断ならない事でも有名ですね!

あと、このゲーム、実は結構フラグ管理が難解で、このコーナーでの会話がルートクリアへのヒントとして機能する事が非常に多いです。ぐだぐだ面白くて時々ためになる!そして、司会進行のネコアルクとシエル先生は可愛い!こりゃ全バッドエンドコンプするっきゃないぜ!

月姫リメイクの不満点

やはり分割収録なのは残念過ぎる

巷では、「”秋葉”琥珀”翡翠”ルートが収録されていないバグの修正を頼む!」的な冗談が笑い話のネタになっていますが、ぶっちゃけこれは真面目に残念っすよね……。

これは筆者の感覚が古いだけかもしれませんが、ビジュアルノベル(特に分岐のある作品)は、マルッと全てのルートが綺麗に収まっている所にも芸術性を感じるんですよね。……なので、今回の様な分割収録・分割販売ってあんまり好きじゃないってのが本音です。

これがオマケシナリオとかファンディスクだったら別に良いんですけど、『月姫』って作品は元々全5篇で構成・完成された作品なので、そこから分割するってのは正直美しくないです。

「いやいや『月姫~半月版~』知らず?これでこそ『月姫』だし!」

……って言われたらそれまでですが、少なくとも12年もの期間があった訳ですし、「今回は月の表側だけです」ってのは正直聞きたくなかったです。

分割収録の弊害!本作では出番のない新キャラが異様に多い

あと、これも分割収録・分割販売の弊害の一つなんですが、「月の裏側」への布石として顔見せだけするキャラが異様に多いのが気になりました。これも一本の作品に全て収録されていたら決して抱かない不満なので、やはり分割は悪しき文明と言わざるを得ません!

コスト的に分割にせざるを得ないって話なら2本分払うので、とにかく続きを早くやらせてくれ!(結局はそれ)。

月姫特有のジメジメ感・路地裏感の喪失

Fateに寄せた演出というか、路地裏感の喪失というか、あの『月姫』特有のジメジメっとして血生臭い雰囲気が薄くなったな~って印象はありました。いや、別に、映えを意識したド派手な大規模戦闘が悪いって訳では決してないんですが、ジメジメっとしたのもっと欲しいなぁ……って……。

まぁ、ジメジメ要素は「月の裏側」に期待するとします。

現状、無印が遊べない状況が勿体ない

あとコレは本作の不満点って訳ではないんですが、本作を、入手困難かつプレイ困難である『月姫』(オリジナル版)を知る為のきっかけと捉えていた人も多いと思うんですが、これだけ変わってしまっていると、それは果たしてその目的の為に機能しているのか怪しいなぁ……て。

厳密には違いますが、『月姫(無印)』と『月姫R』は、ある意味『FF7』と『FF7R』の様な関係になってしまっていると感じたので、原点を知る為にも『月姫(無印)』を遊べる環境・プラットフォームがあると良いかなぁ~って思いました。無償ってのは流石に難しいでしょうけど、それこそスマホ版「Fate/stay night [Realta Nua]」みたいな仕様だと理想じゃないでしょうか?

まぁ別に『月姫R』から遊んでも全然問題は無いんですけど、『無印』と『リメイク』における『変化』という要素が、更なる”面白さ”を生み出しているってのは絶対にあると思うので、ちょっと我儘を言わせてもらいました。

……とまぁ、こんな感じで色々いちゃもん付けましたけど、ゲーム本編に関しての不満は一切ないです。需要がある所にまっすぐに剛速球が投げ込まれている!お見事!

 

 

 

 

……という事で、レビューの表側はここまで!ここからはネタバレMAXの裏側が始まるので、未プレイの人は直ちにバックし、クリアしてからまた来てください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルートごとの感想

アルクェイドルート感想

「月姫 -A piece of blue glass moon-」オープニングアニメーション

全ルートに言える事ですが、やはりネロ・カオスのリストラは衝撃的でした。

ネロ・カオスと言えば、666の魂のストック故に普通には倒せない……が、志貴が持つ”直死の魔眼”ならばOK!という、THEチュートリアル的な存在で、月姫という物語の導入には不可欠な存在だと思っていただけに、「ここを改変するのか……」って違和感は少なからずありました。

ネロがリストラされた原因は定かではありませんが、恐らく譲治さん被りを避ける為だったのかなぁ……と。真月譚(アニメ版)って例外こそありますが、ネロといえば中田譲治さんな訳で、でも、今の型月の譲治さんといえば言峰綺礼のイメージの方が強いですから、声の代役を立てるくらいならキャラごと代えてしまえ!って判断に至ったのは分からなくもないです……。

まぁ、代わりに出てきたヴローヴ(CV津田健次郎氏)が声も含めて魅力的だったのがせめてもの救いですが、無印をプレイした身としては、やはり少し寂しさはありますね……。

……ま、ネロリストラ等の改変こそありましたが、アルクェイド編はほぼオリジナル準拠で、THEリメイクって感じの安心感はありました。それこそ、アルクェイドの可愛さは無印版よりも更に磨きがかかっていたし、ロアとのラストバトルは佐々木少年版(漫画版)へのリスペクトたっぷりでしたからね!これは往年の型月ファンもニッコリの仕上がりだったと思います。

追伸.せめてメルブラには出してあげて欲しいけど、多分そこもヴローヴに差し代わるんだろうなぁ……(DLCに期待)

シエルルート(ノーマルエンド)感想

「月姫 -A piece of blue glass moon」シエルルート オープニングアニメーション

核となる設定等はオリジナル準拠なんですが、中盤以降の展開は最早新ルートと言っても過言では無いレベルの改変っぷりで、シエル編はプレイしていてかなり新鮮な気持ちになりました。

印象的なシーンやフレーズは多々ありますが、シエル編と言えば、やはり新キャラクター・ノエル先生の大活躍(?)っぷりは外せないでしょうね!

一見、シエルの金魚の糞的な雑魚キャラかと思いきや、恨み・妬み・嫉み・憧れ等、様々な感情で内側がぐっちゃぐちゃになってる幸薄キャラ良いぞー‼

まぁ、シエルルートに厚みを持たせる為だけに生み出された便利キャラではあるんですが、シエルとバディを組むに至るまでの設定に無理はないし、その打算的な葛藤も個人的には好きでした。
あと、自らを弱者であると認めた上で、格下相手にイキリ散らすスタイルも好きですね!吸血鬼化した後の戦闘スタイルも人間だった頃の性格に基づいていて、一貫性が感じられて良かったです。

エンディングの展開には賛否両論ありそうですが、一人の男の死を一人の女が肩代わりし、生かされた男が女の背中を追いかける…という展開は、切なくも希望が感じられて個人的には好きです。

追伸.”尼僧キアラ・キッショウイン”とかの下りはちょっとファンサービス過多な気もしましたが、FateやFGOに寄せていくのは今なら必然だろうし、商業的な観点なら正しい判断なんでしょうね。

シエルルート:トゥルーエンド感想

本作で一番ぶっ飛んでたルートと言えばやっぱりコレ!このルートに関してはちょっと言いたい事が多すぎて滅茶苦茶長くなりそうなんで、予め謝っておきます(ごめんなさい)。

まず最初に言いたいのがルートの分岐方法について!

ある種のお家芸みたいな所ではありますが、アルクェイドの好感度(アルクェイドポイント)を高めた上で、そこから叩き折る(掻っ切る)という分岐方法が最高でした。

全力で好き好きモーションを仕掛けてくるアルクェイドの想いに、首切りで応じる志貴くん(草)。

……とまぁ、全国のアルクェイド推しの皆さんには申し訳ないんですが、この非情な展開はかなり良かったです。……だって、アルクェイドの心描写が滅茶苦茶秀逸で、ある意味ルートヒロインであるシエルよりもヒロインヒロインしてたんですもの!

刃物による切断よりも、志貴による拒絶の言葉の方がアルクェイドを傷付ける。直死の魔眼よりも愛する者の拒絶の方が破壊力があるって……滅茶苦茶良くないですか?

このルートのアルクェイドは誰がどう見てもヤバヤバでコワコワなんですが、それと同時に超可愛いっていう二面性が楽しめるから超お得!アルクェイドは光体になっても可愛いのだ!……あと、ロングスカートのファンサービスあざーす(大感謝)

次は、お待ちかねのメインヒロイン(?)ミハイル・ロア・バルダムヨォンさんのエントリー!

ヴェノムというか、もう一人の僕というか……いやもうこれ、実質ヒロインでしょ!

志貴くんが理解しやすいように的確な例えを用意する配慮、聞いても無いのに教えてくれる敏腕ナビの数々、これはもう世話焼きな姉さん女房の様な風格!……とまぁ冗談はさておき、全ての元凶である宿敵・ロアと共闘する形で真祖の姫君と戦う構図は胸熱でしたね!

いや、最初はもっと苦言を書き連ねるつもりだったんですが、改めて思い返したら、何だかんだで面白かったしまぁ良いか……って気持ちにさせられてしまった(私の負け)。

光体・アルクェイドとの大規模戦闘は好みが割れる所ではあると思いますが、とりあえずアニメ映えはしそうだよね……(きっとその内Ufoでアニメ化されるんやろうなぁ……名推理)。

ただ、シエルルートが二つあるのに対しアルクェイドルートが一つしかないってのは流石に不公平なので、続編で何かしらのサプライズはあって欲しいですね!

回収されていない伏線・キャラクターについて

秋葉、翡翠、琥珀ルートは当然として、さっちんルートよろしく頼む(切実)。

でもまぁ、表で伏線張りまくっただけあって、裏(続編)は相当様変わりしそうですよね!

ジュースをくれた中学生・みおとか、やたら嫌味ったらしいマスクマン・斎木業人とか、結局顔見せしただけだったので、ここら辺の活躍にも期待したいですなぁ……。

あと、阿良久先生も裏側で遂に本格始動するんでしょうね!

メタスタシス(蜘蛛っぽい化け物)とかどう考えても阿良久先生の差し金でしょうし、もう名前からしてアラクネをイメージしちゃうんですが、結局どういった立ち位置なんでしょう?本能の赴くままに行動するヤベェ奴って印象が強かったので、黒幕って感じではなさそうですけど、秋葉絡みのエピソードで大きく絡んでくるのは恐らく間違いないでしょうねぇ……。

あとあと、マーリオゥくんの今後の活躍も気になる所。兄弟の話が出てたけど、あれって結局どういう事だったんだろう?マーリオゥ=ラウレンティス枢機卿なのかな?とも思ったけども……?

まぁ、一番の問題は、続きが何年後に発売されるのか……って事ですけどね。…5年以内で頼む。

さいごに

最初は当たり障りのないご新規さん向けの記事に仕上げるつもりだったんですが、プレイしている内に筆者の中の共有欲が掻き立てられてしまい、ちょっと我を出したくなっちゃいました。

ネタバレ解禁とは言っても、Twitterとかだと中々気軽に発言できないでしょうし、ここが続編を待ち望む者たちの待機部屋(墓場)になってくれたら幸いです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました