集英社新書4月の新刊『荒木飛呂彦の漫画術』を購入・読了しました。
先生のファンであり、形は違えど『表現』というフィールドに足を突っ込んでいる身として、この本を読まない訳にはいかないぃぃ!地味めな装丁の集英社新書の中で、この抱き合った荒木先生と露伴先生の表紙は一際異彩を放っていたのですぐに見つけられたぞ!ドドドドド
表現する者たちへ贈る一冊の「地図」
【全七章+実践編二章】で構成された総ページ数281からなる一冊の「地図」。それが、「荒木飛呂彦の漫画術」だ。
私自身、今までに何冊もの表現に関するのハウツー本に目を通してきた経験がありますが、この本には技法や心構えは勿論の事ながら、その先にある境地に関してまで書かれていました。既刊本二冊(映画論と映画の掟)からすでに感じとれていた事ではありますが、この荒木飛呂彦という男…。表現するという事に対して一切の妥協なし!
「自分がいいと思う自分が好きなものに忠実でありたいという思いを曲げることは出来ない。」こんな台詞を言えるのは、裏打ちされた実績と実力を持つ先生だからこそです。
やっぱりでかいな、荒木先生は…。
漫画の「基本四大構造」を知る
本書の中で度々、漫画の「基本四大構造」という言葉が登場する。時代を超えて読み継がれるような「王道漫画」を生む為には、①「キャラクター」、②「ストーリー」、③「世界観」、④「テーマ」という4つの要素のバランスがとても重要になってくるとのこと。
ここでは私も大好きな漫画『孤独のグルメ』を例に挙げて、「基本四大構造」について説明してくれています。荒木先生による『孤独のグルメ』の分析が聞けるなんて思ってもみなかったので少し興奮してしまいました。
身上調査書は「秘伝のたれ」
「基本四大構造」の中でも最強、それが「キャラクター」。この最強の要素を揺らぎないものにする為に、先生は「身上調査書」なるものをキャラクターを絵にする前に作成するらしいです。
本書内には、実際の身上調査書が写真付きで紹介されていますが、名前、性別、身長などから始まって、将来の夢や人間関係、性格や趣味趣向に至るまで事細かに用意されていて、中には「こんなの必要になるの?」って項目まで存在しています。
しかし、こういう一見無駄にも感じるような事がキャラクターのリアリティや魅力、動機付けや目的、ジョジョで言えばスタンド能力などの構築に不可欠との事です。
確かに、ジョジョのキャラクターって個性が強いけど、そこから逸脱する事はほとんどないですもんなぁ…。身上調査書の重要性は先生の作品を読めば頭でなく心で理解できますね。
日常から「起承転結」を体得する。
「起承転結」がストーリー作りの基本である事は我々でもすんなりと理解出来きますが、それを実行するとなると話は別。「起承転結」は創作物の中だけでなく、我々の実生活の中にもゴロゴロと転がっているものであり、特別なものではない。
確かに何気ない事ではありますが、「意識せずに自然と発想できるか?」と聞かれれば、答えはNOですね。
主人公は常に前へ上へ「プラスの法則」
バトル漫画におけるパワーのインフレは永遠のテーマであり、面白さや人気に直結する要素だと思います。スタートがマイナスでも構わないが、「マイナス」と「プラス」を繰り返すようなやり方は読者を退屈させてウンザリさせる結果を招いてしまう。あえて「マイナス」の表現に挑戦するならばそれなりの覚悟と入念な計算が必要になるともおっしゃってます。
インフレし続ける事で駄目になる作品も確かに存在しますが、インフレのないバトル漫画ほどツマラナイものもないですよね。要するに、うまくコントロールしながら最大限の「プラス」展開を用意する事が王道漫画への「黄金の道」であると私は理解しました。
35年の実績からくる説得力!
この本には、私の人生よりも長い期間、漫画家として一線を走り続けてきた荒木飛呂彦先生が目印にしてきた「地図」であり、揺るぎ無い「自信」が記されていました。ここで紹介した事柄以外にもデッサンの重要性や道具の選び方、ネームの切り方まで図を交えながら丁寧に解説してくれています。
『武装ポーカー』や『ジョジョリオン』など先生自身の著書から実例を出してくれるので非常に理解しやすくて読み易さも抜群です。特に『岸部露伴は動かない』からの実例が多いので、照らし合わせながら読んでいけばより深く理解できると思います。
タイトルは「荒木飛呂彦の漫画術」となっていますが、内容的には「荒木飛呂彦の表現術」と言っても過言ではないと思います。
『漫画』だけでなく、『小説』、『ゲーム』、『アニメ』、『映画』、『ライター』など、表現する事を夢見る人全てにオススメできる良書です。
荒木先生にとっての『映画術』のように何度も読み返したくなるような宝物がまた一冊、私の本棚に加わりました。これだから読書は止められない。
【きゃすとの満足度】荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)
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