ノベルゲー・テキストアドベンチャーのような雰囲気をそこはかとなく感じる作風ながらも、その実態は「ノンストップ残機サバイバルRPG」(ダンジョンRPG)という驚愕の意外性。
ジャンルと作風の不一致感、ネタバレが致命傷となる物語・設定等、プロモーション難易度を自ら高めていく逆境モードで送る『ダンガンロンパ』スタッフ最新作、『ザンキゼロ』のレビュー記事です。
発売日 |
2018年7月5日 |
ジャンル |
ノンストップ残機サバイバルRPG |
対応機種 |
PS4/VITA |
プレイタイム目安 |
35時間~40時間 |
公式サイト |
ザンキゼロ |
サイコでポップな高難易度ダンジョンRPG作品
人類滅亡。残された8人の若者。急激に成長し、僅か13日前後で朽ちる肉体。死をバネに強くなるクローン人間という強みを武器に、若者たちは荒廃した世界を探索する。
こう聞くとダンジョンRPGに適したプロットのようにも感じますが、実際は背後に渦巻く陰謀、不条理の強制、見えざる力に翻弄される若者達という、まさに『ダンガンロンパ』的な流れの作品です。
まず前提として、あのエロ・グロ・サイコ・シュールetc、多角的にもたらされる悪ノリ全開の作風が許容できるか否か……そこが重要になってきます。
『ダンガンロンパ』シリーズは、回を重ねるごとに下品さが強化されていった印象でしたが、それらシリーズ比較しても引けをとらない下品さを本作は誇っています。
ゲームの面白さ以上にここが最大のハードルとなる人もいると思うので、事前に警告しておきます。
粗削りだが魅力的・魅力的だが至らないゲーム性
新規IPという事もあり、ゲームシステム・レベルメイクなどはぶっちゃけかなり粗削りです。
プレイの中で感じる面白さ・魅力的な要素、それと同時に訪れる粗・至らないポイント・改善点の数々、「個人的には面白いと思うんだけど……これを面白く感じない人はいると多いと思う……。」そんな微妙な評価をついつい下してしまいそうになる、良さと悪さの謎の共存が本作にはあります。
本項では、『ザンキゼロ』の意欲的だが改善の余地が多いポイントをご紹介していきます。
多すぎるステータス管理・理不尽に死ぬ謎のサバイバル感
まず、本作の難易度を著しく高めている要素の一つとして、空腹・ストレス・便意の管理が挙げられます。
サバイバルものという事を考慮すれば、この3つを管理ステータスとして設定するのは理解できますが、ここをシビアに設定し過ぎると一気にストレスフルな作品になる事は手に取るように分かります。
空腹による餓死、トイレ不在による漏らしからの悪臭・臭死等々、頭では理解できるけど、ゲームのテンポを著しく損なっている三大ステータスの存在は、プレイヤーに緊張感ではなくストレスを与え続けかねません。
特に空腹の管理は終盤まで改善される事が無く、主な死因は餓死と言っても過言では無い位にシビアです。
これを廃止しろと言うつもりは微塵もありませんが、せめてプレイ進度に応じて管理難易度を緩めるシステムを用意して欲しかったというのが本音です。
一応トイレ横の家庭菜園で野菜は採れますが、食べ盛りの若者たち8人のおなかを野菜だけで満たす事は叶いません。「倉庫」や「調理室」といった施設が強化できるのだから、家庭菜園や糧食班的なシステム強化が出来てもおかしくないのではないでしょうか?
対処方法が極めて限定的な風来のシレンを遊んでいる感覚
理不尽がそこら中に転がっている本作の中で、最も理不尽に感じたのが、ダンジョン内で複数の敵や袋小路に追い込まれた際の対処方法の少なさです。
同社の作品である『風来のシレン(不思議のダンジョン)』は、誰もが認めるスルメ死にゲーですが、あのゲームの死因には、自らの至らなさ・ノウハウ不足という納得が伴います。しかし、『ザンキゼロ』の死因は、突如発生するイレギュラーから繰り出される成す術のない「死」です。
一人称視点で視覚情報が限定的、マップにエネミーが表示されない、通常攻撃しか使えない、ターン制ではなくリアルタイムで相手が動く『風来のシレン』。
流石にこれはちょっと大げさに言い過ぎていますが、強ち嘘ではないから困ります。
死がキャラクターを強くするシガバネシステムは面白い。しかし課題も多い。
しかし、そんな理不尽への対抗手段が一切存在しない訳ではありません。
本作では、死因への耐性を得る「シガバネ(死がバネ)」というシステムが搭載されています。
まぁ、ジャガイモ食ってジャガイモアレルギーで死ぬようなゲームですから……これぐらいはあってもらわないと困りますよね(笑)。
「シガバネ」は非常に面白いシステムでしたが、この耐性という部分がかなりマイルドかつ、キャラごとに設定されている事もあり、成長を実感しにくいという課題も感じました。まだまだ伸び代のあるシステムだと思うので、今後のシリーズや別作品用に大事に育てて行って欲しいです。
どこ向けかわからない設定について
最初に警告したストーリーに関する補足となりますが、想像以上にエロ・グロ・ホラー・下品で形成されています。……下手に手を出すと火傷する事間違いなしなので、再度警告しておきます。
エログロ・胸糞な設定のオンパレード
クローン人間として生き残った最後の8人が、自分たちが残された理由、そして背負った罪の重さを思い出していくのが本作の核ですが、それを支える設定・物語は陰鬱かつ胸糞なものばかりです。
登場キャラクターの設定が25歳という事もあり、『ダンガンロンパ』の高校生設定にはなかった別のベクトルのエロ・グロ・胸糞設定が用意されており、確実に人を選ぶものに仕上がっています。
『ダンガンロンパ』が楽しめた人なら大丈夫だとは思いますが、一部はそれらを超える胸糞なので要注意です。筆者は平気でしたが、気持ち悪いと感じる人も当然いると思います。
雑なミスリード演出・それをゴリ押す謎のパワー
『ダンガンロンパ』シリーズは、情報開示の匙加減・タイミング・それに伴う演出が非常に巧妙な作品ですが、『ザンキゼロ』は、とある一部分で展開されるミスリード演出が非常に雑でした。
あえて分かり易くした可能性は捨てきれませんが、流石にちょっと勿体無い…というのが本音です。
未プレイだと意味不明だと思いますが、プレイすれば「あぁ、ここの事か!」と7,8割の人が気付くポイントだと思います。
まぁ、それ以外は普段通りの謎のごり押しハッタリパワーで気になるポイントもなく、程よく騙して、程よく驚かせてくれる作品に仕上がっていました。
話が気になるから理不尽を乗り越える原動力が生まれるのかもしれない
ストーリーの続きが気になったから、理不尽に挫けずに頑張れた…ってのはあるかも!?
流石にポジティブシンキング過ぎる気もしなくはないですけど、それが原動力になったから最後までプレイできたというのは若干否定できません(笑)。
理不尽・死にゲーどんとこいならオススメできる作品です
「理不尽」・「ストレスフル」・「一歩間違えたらクソゲー」って言葉がよく似合う作品ですが、そういった障害を乗り越えるのが好き・死にゲーウェルカムって人にはオススメできる作品です。
好きな人は好き、嫌いな人は大嫌い……綺麗に割れる所なんかも実に『ダンガンロンパ』スタッフらしいですね(笑)。
ここまで割ときつめの酷評を披露してきましたが、実はクリア後もトロコン目指してコツコツ遊んでいたりします。
新規ipだから許される粗削りの意欲と挑戦…気になる人は理不尽の海へ是非飛び込んでみてください。
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